第14章 体育祭の終わりと、スタートライン
私にしたように、オールマイトは焦凍や爆豪君にも同じようにメダルを授与し、そして言葉を交わしていく。焦凍は声が小さかったから何を話したのかはわからなかったけれど、随分すっきりとした顔をしていたからきっと焦凍の為になる話だったに違いない。
私達にメダルを渡し終えると、オールマイトは会場にいる人達に向かって声を張り上げた。
「さぁ!!今回は彼らだった!!しかし、皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!
……てな感じで最後にひとこと!!皆さんご唱和ください!!せーの!」
「「「プルスウルト「おつかれさまでした!!!!!!」ラ」」」
会場全体からの“プルスウルトラ”コールをかき消す、オールマイトのお疲れ様。当然、会場全体からブーイングが降り注ぐ。……ほんと、最後まで締まらない体育祭で、そしてなによりも平和だった。
――
体育祭も終わりを告げ、私と焦凍は家に帰ってきていた。体育祭でのスカウトの集計は、休みになった明日明後日に先生方が纏めて発表するらしい。
焦凍にはまず間違いなくエンデヴァーさんからのスカウトが入っているだろうけど、私はどうだろう。……いや、ここまでサイドキックとして育ててきた手間もあるだろうし、私にも出しているかもしれない。どちらにせよ、私が焦凍の婚約者のままでいられるかどうかは今夜にでも決まるんだろうな。
そんなことをぼんやりと考えていると、部屋の扉がノックされる。冬美さんかな。そう思って返事をすると、以外にも部屋に来たのは焦凍だった。
「焦凍がノックして入ってきた……。」
「しねえと怒るだろ、お前。」
「うん。怒るけど、それでもしなかったのが焦凍だったよね。」
珍しい、と思ったことを隠そうともせずに焦凍に接すると罰が悪そうな顔をしてそっぽを向かれる。今まで怒っても変えようともしなかった焦凍に何があったのか。……やっぱり、緑谷君との戦闘で色々考えることが増えたんだろう。
焦凍は、大きくため息を吐くと私に向き直った。
「明日、母さんと会ってこようと思う。」
「……そっか。決めたんだね。」
「ああ。」