第14章 体育祭の終わりと、スタートライン
『3位には至情さんともう一人、飯田君がいるんだけど……ちょっとお家の事情で早退になっちゃったので、ご了承くださいな。
さぁ、メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!!』
『私が!!!』
スタジアムの屋根に、人影が現れる。そして、意気揚々と彼の特徴である言葉を口にしながら屋根からスタジアムに向かって派手に飛び降りてくる。
『メダルを持ってきた!!』
『我らがヒーロー、オールマイトォ!!』
派手なパフォーマンスを見せながら現れたNo.1ヒーローの台詞は、なんと司会者による紹介ともろ被りになるという、これまたなんとも締まらない始まりになった。……締まらなさ加減って、伝染するんだね。
そう思いながら、未だに獰猛な大型犬のようにうなり続ける爆豪君を見つめた。
オールマイト直々にメダルをかけてもらう表彰式は、はっきり言って豪華過ぎた。少なくとも、ファンであったらならこの立場をお金を払ってでも欲しいと思うんじゃないだろうか。普通の人よりももの凄く鍛え上げられた身体とは裏腹に、もの凄く優しくハグされながら他人事のようにそんなことを想っていた。
「至情少女、3位おめでとう。君の持ち味である高速戦闘を生かした戦い方だった。ただ、相手を捕らえる術に欠けるのが君の欠点だ。そこさえ補えば、君はもっと強くなれる。」
「……はい。」
今まで、相手を捕らえる技術に必要性を感じてこなかった。それは、焦凍をメインに据えた戦い方をするつもりでもあったからだし、私が焦凍の傍を離れることがないからだと思っていたから。……けれど、緑谷君との戦いがきっかけになって、焦凍の視野は広がった。焦凍が、私を必要としなくなる日も意外と近いのかもしれない。
激励を送るように軽く背中を大きな手で叩かれ、背に回った腕は離れていった。