第13章 対決、爆豪
……全て、読まれている。爆豪君の言う通り、人魚姫は呼び出すのに大きなコストがかかる代わりに、“エネルギー操作”の個性を無尽蔵に使うことができる。ただし、人魚姫は動きが鈍く、脆い。攻撃されてしまうと、その姿を維持するために失った分のエネルギーは勝手に消費されてしまう。だから、フィールドから離していた。
「で、攻撃してみたらお前は慌てて人魚を退避させようとした。なら、もう殴る他にねぇわな。……で、要の人魚を失ったてめぇに何ができる?一撃で俺を落とす手段がねぇ以上、詰みだ。」
残ったエネルギーは少なく、もう一度人魚姫を呼ぶ力はない。そして、長時間の高速戦闘を行うだけの力もない。爆豪君の言う通り、この状況で私に打てる手はもうない。だけど……
「それでも、私は焦凍の傍にあり続ける為なら無茶もするよ。」
フィールドに戻ってきた爆豪君の周囲を円で覆う。効かないと分かっている戦法を取るなんて、ヤケを起こしたと思われても仕方ない。でも、無様に負けることは許されない。私が今からするのは、とんでもない無茶だ。無謀だ。できるかどうかもわからない賭けだ。
「たかが他人に媚びうるためだけにする無茶は、ただのバカと変わりねぇよ!」
「貴方に関係ないでしょ……!」
私にとって、焦凍の傍にいることは存在意義。否定なんてさせない。私に出せる、最大火力を持って、貴方をこのフィールドに沈めてみせる!
ぐっとコンクリートの床を蹴って、爆豪君に向かって飛ぶ。もう見切られた動きだ。瞬時に爆豪君は対応して私に向かって爆破を放つ。その手を最小限の動きで避けるけど、広がる爆風が肩を焼く。じわりと広がる痛みを無視して、周囲の円を使って飛び回りながら爆豪君をこの場へ留め続ける。私を突き動かすのは、ただ焦凍の傍にいたいと願う思いだけ。私の心を写したモノが“人魚姫”だっていうのなら、今この場で!この思いに応えてみせろ!!
バチン、と核石から黒い火花が散る。手の甲から焼けつくような、何かが壊れてしまうような痛みが走る。そして――私と爆豪君の上に大きな影が落ちてくる。
ズシン。大きな音を立てて、もう一度呼び出された人魚姫の大きな手のひらが爆豪君と私に向かって落とされた。その一撃はコンクリートのフィールドを割り、もうもうと土煙で地面を覆う。