第3章 合否通知
もしかしなくても、これが要件なんじゃなかろうか。その封筒を焦凍が私の方へ滑らせる。封筒は少し分厚く、真ん中が不自然に膨らんでいて今時には珍しい封蝋で閉じられている。封蝋の刻印はUとA……って、ちょっと待った。
「……ねぇ焦凍君。私の目が確かなら、これって合否通知じゃないの?」
「そうだな。」
「悪戯する暇があったら普通に言おうよ!今の私にとってめちゃくちゃ大事じゃん!」
「わりぃ。」
「それ言えば許されるって思ってないよね!?」
慌てて封筒の封を切って中身を全て取り出す。入っていたのは数枚の書類、そして中央に膨らみを作った原因であろうボタン状の小さな機械。合否の書いてある紙はないものの、被服控除なんて用紙があるなら無事合格したと思っていいかな。肺にため込んだ空気を思いっきり吐き出して机に突っ伏す。あ~、ようやく不安から解放される……。
「大丈夫か?」
「受かったと思うと気が抜けた……よかった……」
「不安だったのか。なら悪かった。」
猫を撫でるように頭を撫でてくる焦凍の手をそのまま受け入れて目を閉じる。受かってたんだし、これは早く冬美さん――焦凍のお姉さんに伝えないと。私のことも家族と思ってくれる優しい人だから、きっと自分のことのように喜んでくれる。冬美さんの柔らかい笑顔を想像して胸が暖かくなった。
「奏、これ見といた方がいい。」
焦凍が頭を撫でるのを止めて、私の手にボタン状の機械を乗せる。どうやら、焦凍はこれが何か知っているらしい。乗せられた機械を手の中で転がしながら手っ取り早く焦凍に確認を取る。
「何これ?」
「記録媒体かなんかだ。後ろのボタン押すと立体映像がでる。」
「へぇ。すごいね雄英。」
焦凍に言われるまま後ろのボタンを押す。すると、表側に空いていた小さな穴から光が出た瞬間、『私が投映された!』と聞き覚えのある声が響いた。機械を丁寧に机の上に置いて見たホログラムはどこかのスタジオに見える場所と筋骨隆々の男性――NO.1ヒーロー、オールマイトを映し出していた。