• テキストサイズ

人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第3章 合否通知


 強く抱きしめてくる焦凍にすり寄って甘える。焦凍がこうした態度を取る度に、私を想ってくれているんじゃって期待しちゃいそう。だけど間違えちゃいけない。まず間違いなく、焦凍が私に向けている感情は親愛からくる独占欲。それを、恋のように焦凍は感じているだけなんだと思う。そうじゃないなら、多分焦凍はエンデヴァーさんのいう許嫁を受け入れたりなんかしない。自分勝手な感情で誰かを縛るのを激しく嫌う焦凍がそのことを理解した時、あるいは本当の愛を知った時……焦凍が私を捨ててしまう時が来る。
焦凍のことをちゃんと考えてあげるなら、私がその感情は独占欲であると教えてあげなきゃいけない。でも、捨てられたくないから私は言い出せないでいる。承認欲求の、なんて醜いことだろう。
 奏。名前を呼ばれて顔を上げると、焦凍が私の右手にある核石に優しく触れる。深い深い藍の色に染まった核石は、私の感情を写す石のくせに憎たらしいほど美しかった。

「お前は、いいのか。」
「私、焦凍のこと好きだよ。だから、むしろ願ったり叶ったりかな。」
「そうか。」

 右手が持ち上げられ、焦凍の唇が核石に触れる。びっくりして手を引こうとするけれど、思いのほかしっかりと握られた手は全く動かすことができない。きらり、きらきら。アクアマリンを光にかざしたように核石が瞬く。

「しょ、焦凍!?なにして……!」
「わりぃ。触りたくなった。」
「あ、いや、いいんだけど、いや、よくないのか!?」
「いいなら触る。」
「ひえぇ……」

 私に恋してるわけでもない焦凍にこんなことをさせるわけには。いや、私は嬉しいんだけれども!?
テンパる私をよそに、焦凍は気の赴くままに私の核石に触れる。ドッペルの核であるそれに焦凍が触れると瞬いてはエネルギーを蓄えていく。個性を使ってもいないのに、ガンガンチャージされても恥ずかしさが増すばかりなんだけど……。とりあえず、この状況をなんとかしたくて焦凍の胸をぺちぺちと叩いてこっちに意識を向けさせる。

「えぇと、焦凍!なんか用事があって部屋に来たんじゃないの?」
「……忘れてた。」
「要件を忘れちゃダメでしょ。」

 やっと私を解放して仰向けになった身体をぐっと起こす。また拘束されちゃ敵わないからね。身体を起こすと焦凍が持ってきたであろう封筒が一つ炬燵机の上に置かれているのが目に入った。
/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp