第12章 轟焦凍　オリジン

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　案の定、飯田君と塩崎さんの試合はものの数秒で決着がついた。やっぱり、人の反応速度を上回るスピードでの戦闘は相手を一方的に攻撃できる利点があるよね。私と飯田君の戦闘スタイルは細かい所は違うけれども似ている。親近感を抱くと同時に、こいつには負けたくないぞ！とも思うんだ。
　目の前に立つ常闇君とじっと睨み合う。ダークシャドウは中距離での攻防に優れた個性。けど、凄く優れているからこそ個性に頼っている部分が大きい。

『さぁ、次の試合！前の試合で相手に何もさせずに勝利を手にした者同士の戦い！至情奏VS常闇踏影！！START!!』

　プレゼントマイクの開始宣言と共に、常闇君のお腹からダークシャドウが飛び出てきて私を近寄らせまいと牽制する。

「至情のスピードは脅威。近寄らせるな、ダークシャドウ！」
『ワーッテルヨ！』

　足を踏み出して近づく素振りを見せると、瞬時にダークシャドウが腕を振り上げて足元へと攻撃してくる。私が足を踏み出さずにいると、じりじりと距離を詰めて逆に私を下がらせようとする。

『至情、動こうとする度に牽制され、上手く動けないままじりじりとフィールドの端へと追い詰められていく！これは、万事休すか！？』

　そんな風に見られているなんて、大変心外です。ダークシャドウの攻撃は確かに早いし、攻撃から防御に移るスピードもなかなか。けれど、私より遅いのなら目で見えるし避けられる。
今までの様子見とは違って、今度は常闇君の周囲に円を展開して足を踏み出す。足元目掛けて振り下ろされるダークシャドウの右腕をターンで避けて、瞬時に目の前に作った円の中へ飛び込む。
ぐんっと急激に加速する身体。飛ぶように流れる景色。常闇君の周りに展開した円を足場にして私は空を自由に泳ぐ。ダークシャドウを誘うように空中でふわりと宙返りを決めて見せると、捕まえようと腕が伸びてくる。その腕をすり抜けるように加速し、常闇君の懐へと踏み込んでスピードに任せたタックルをお腹に決める。綺麗に決まった一撃によって、常闇君は後ろへ吹き飛んだ。

『ダークシャドウの一撃を避け、至情がスピードで常闇を翻弄する！あっ、避けた！――と思ったら常闇が吹っ飛んだ！！！』