第12章 轟焦凍 オリジン
ああ、いつも通りだな。変わらず、こいつの言うことには苛立ちが募る。凝り固まった思考は――復讐に囚われていた思考は、確かにぶち壊されたけれど、それでも変わらないものはある。親父を許せねぇ。なかったことなんかにはできねぇ。……憎く思う、この心は捨てられねぇ。
「卒業後は俺の元へ来い!!俺が覇道を歩ませてやる!」
「捨てられるわけねえだろう。そんな簡単に、覆るわけねえよ。……ただ、あの時。あの一瞬は、お前を忘れた。」
黙っている俺に色々と捲し立ててくる親父を遮って、今まで言ってこなかった考えを口に出す。そう、確かにあの時は忘れられたんだ。俺が、ただの“俺”になれた。
俺は、思い出した夢を追っていいのか?お母さんを泣かせた俺が、このまま歩いて行っていいのか?――わからない。ただ、少しだけ広がった視野は、俺に“考える”きっかけを与えてくれた。
「それが良いのかわりぃのか、正しいことなのか……少し、考える。」
俺が自分の意見を口に出したからか、それとも左を使うことへの迷いを見せたからか、唖然とした親父を置いて俺は今度こそ観客席の方へと向かった。