第12章 轟焦凍 オリジン
俺の力……?そう言われた途端、ふと思い出す。あの時、お母さんと奏と一緒に見ていたものを。あれは、オールマイトのインタビューだった。
『“個性”というものは親から子へと受け継がれていきます。しかし、本当に大事なのはその繋がりではなく、自分の血肉……自分である!と認識すること。そういう意味もあって私はこう言うのさ!“私が来た!”ってね。』
――でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?いいのよ、お前は。血に囚われることなんかない。なりたい自分に、なっていいんだよ――
思い、だした。
お母さんは、俺の頭を優しく撫でてそう言ってくれた。そう、優しく微笑んでた。
――焦凍の炎は怖くないよ。だって、焦凍の炎だもん。だから、大丈夫だよ。――
思い出した。
奏は俺が左の炎が嫌いだって言った時、左手を握ってそう言ってくれた。だから、俺はお前の為になら左を使えた。ただお前が傍にいてくれていたからだけじゃなかった。
――いつの間にか忘れてしまっていた“想い”を、思い出した。
熱く、身体に熱が灯る。だって、思い出しちまったんだ。そう、俺は、親父を否定するためにヒーローになりたかったんじゃない。ただ、画面の向こうのあの人に憧れた。あの、カッコイイヒーローに!
「勝ちてぇくせに……ちくしょう……。敵に塩送るなんて、どっちがふざけてるって話だ……。俺だって、ヒーローに……!!」
馬鹿な奴。痛みすら無視して、指ぶっ壊して……俺の抱えてたもんまでぶっ壊した。もう、身体を焼くような苛立ちも、憎しみも、今は……今だけは、感じない。じわりと滲み出た涙を手で拭いながら、俺の炎を見て、「凄い……。」と言いながら笑う緑谷を見る。
「何笑ってんだよ。その怪我で、この状況でお前……いかれてるよ。どうなっても知らねぇぞ。」
全力を出せって、そう言ったのはお前なんだから。
炎の熱で、もう俺の冷えは無くなった。氷結を全力で緑谷に向かって放つ。それと同時に、緑谷も己の身体を無視しながら全力で飛び掛かってくる。氷壁をぶち壊される前に、緑谷に向かって左手を向ける。