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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第12章 轟焦凍 オリジン


 これを好機と見てか、緑谷の猛攻は止まらない。元々、接近戦に持ち込もうとしたのは緑谷が反応できていなかったからで、本来俺は近接向きじゃねぇ。このままじゃ押し切られる!距離を作ろうと今作れるだけの氷壁を緑谷へ放とうと右足を床に叩きつける。
一度ぶっ壊れた指を酷使し、もう動かせないはず。そのはずだった指を口に突っ込んで無理やり弾き、緑谷は風圧を繰り出して氷壁を吹き飛ばす。
血だらけの指だ。ぶっ壊れて、もう普通じゃあ動かせねぇような指だ。なんでそこまでして勝ちに来る!?そこまでして勝ちてぇのに、なんで俺に全力を出せなんて言う!?

「なんでそこまで……」
「期待に応えたいんだ……!笑って答えられるような、カッコイイヒーローに、なりたいんだ!!!」

 ”ヒーローになりたい“。それは、確かに俺も抱いていた夢だ。あの日、お母さんと奏にその夢を話した時……二人は、なんて言ってた。……思い出せねぇ。

「だから全力で!やってんだ、皆!」

 ふっと過去へと思いを馳せた瞬間、緑谷にまた吹っ飛ばされて身体がよろめく。集中しなきゃなんねぇ。なのに、こいつの言葉を聞いていると次々と記憶が蘇ってきて集中できねぇ。

「君の境遇も、君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない……。でも、全力も出さないで一番になって完全否定なんて、ふざけるなって今は思ってる!だから、僕が勝つ!!」
「うるせぇ……!」

 何も、何も知らねぇからそんなことが言える!個性が発現してから始まった地獄のような訓練。その訓練で俺が泣く度にお母さんは庇ってくれた。でも、それが原因でお母さんはいつも親父から暴力を受けることになった!
優しいお母さんだった。痛くて、辛くて、苦しくて……頼れるのがお母さんしかいなかった俺は、お母さんが隠れて泣いている事も知らずにただ甘えた。その結果、お母さんは心を壊してしまった……!
そう、お母さんを壊したのはクソ親父と俺だ。なのに、あいつはお母さんのことを気にかけもしない。そこら辺の、石ころのようにしか扱わねぇ……!だから、次に壊されるのは奏かもしれない。俺のせいで、お母さんと同じ道を辿らせてしまうかもしれない。だから!俺は――

「親父を――……」
「君の!力じゃないか!!!」
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