• テキストサイズ

人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第12章 轟焦凍 オリジン


「皆、本気でやってる。勝って、目標に近づくためにっ、一番になるために!半分の力でかつ!?まだ僕は、君に傷一つ付けられちゃいないぞ!全力で、かかってこい!!!」

――いいのよ。お前は――……
一瞬、お母さんの声が脳裏によぎる。けれど、この先をいつの間にか忘れてしまった。どんな顔をしながら言っていた?泣いていたのか、笑っていたのか、それとも怒っていたのか……もう、思い出せないんだ。
 思い出せない苛立ちと、全力を出せと言う緑谷への苛立ちが、ごうごうと腹の中で煮えくり返る。

「……何のつもりだ。全力?クソ親父に、金でも握らされたか……?」

 あの親父のことだ。それくらい平気でする。そう緑谷に苛立ち交じりにそう言うと、緑谷は怒りでさらに顔を歪ませる。

「君は、左のことを言った人には絶対そう言うのかよ。何を思って言っているのかすら、考えないのか!」
「イラつくな……!」

 何を思ってだと?左を使わせようとすんのは、クソ親父以外にいねぇだろ!
近距離なら、緑谷は対応できない。近づくために、緑谷に向かって走る。が、右足を上げたとたん、懐へと踏み込んできたのは緑谷の方だった。
感じたのは、騎馬戦と同じ威圧感。危機感が避けろ!と警鐘を鳴らすが、一度動き出した身体は簡単には止められねぇ。振り抜かれた緑谷の右腕が、俺の腹に直撃した。

『モロだぁー!生々しいの入ったあ!!』

 思いっきり吹っ飛ばされ、身体がフィールド上を転がる。胃の中の物が出そうな程の一撃だ。……奏に腹を殴られ慣れてなきゃ、吐いてたかもしんねぇ。鈍い痛みを訴えてくる腹を押さえながら立ち上がる。追撃してこようとする緑谷を止めようと氷結を放つが、身体の冷えが思った以上に回って威力も勢いも落ちている。

「氷の勢いも弱まってる……!」
/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp