第12章 轟焦凍 オリジン
「っぶなっ!」
着地と同時に緑谷がいた所を凍らせるが、間一髪で避けられる。だが、右足さえ着いていれば、氷結は自由に伸ばせる。緑谷が避けた方向へ間髪入れずに氷結を放つ。流石に、これは避けらんねぇだろ。
一瞬の無音の後、近くで大砲でも打ち鳴らしたかのような音と風圧が襲ってくる。念のためと後ろに作った氷壁は割れ、俺ごと後ろへと押しやっていく。
「……さっきより随分高威力だな。近づくなってか。」
痛みで呻く緑谷の腕が紫色に晴れ上がり、変色している。これで、両手の指と左腕は使えねぇ。……終わりだな。
「守って逃げるだけでボロボロじゃねぇか。」
「……!」
観客席にいる親父が目にはいる。オールマイトに似た力。親父が感じていないはずがねぇ。予想通り、俺が左を使わずに緑谷を追いつめたことが気に食わねぇと不満そうに顔を歪めた。
「悪かったな、ありがとう緑谷。おかげで奴の顔が曇った。その両手じゃ、もう戦いにならねぇだろ。終わりにしよう。」
右足から氷結を伸ばす。もう、緑谷にこれを破壊する手段はねぇ。……勝ったぞ、奏。右だけの力で、勝てたんだ。お母さんも、これで少しは――
『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結を――……』
「どこ見てるんだ……!!!」
不思議と、その声は俺に届いた。
吹き荒れる暴風が、放った氷結ごと俺を後ろへと押しやる。もう、氷を破壊する手段なんてなかったはずだ!
地面に着いた手と足で、慌てて背後に氷壁を張る。場外ギリギリで止まった身体を起こし、何が起こったのかを確認する。……そこにいたのは、壊れた指を使って攻撃を繰り出した緑谷だった。
「なんでそこまで……」
「震えてるよ、轟君。“個性”だって身体機能の一つだ。君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろう……!?それって、左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか……?」
……本当に、よく見てやがる。だが、言ったはずだ……!俺は、絶対に左は使わねぇと!!俺の気持ちを理解しろとは言わねぇ。だが、俺の決心が遊びなんかじゃねぇことは話したはずだ!緑谷……てめぇは何を聞いていやがった!