第12章 轟焦凍 オリジン
――轟side
「来たな。」
胸の内に湧き上がる感情に任せ、目の前の緑谷を睨みつける。右だけで……お母さんの力だけでこいつに勝てば、クソ親父を否定することができる……!そうすればきっと、お母さんも、奏も、自由になれるんだ。ただ似ているってだけで、オールマイトと何か関係があるってだけで巻き込んだ緑谷にはわりぃとは思ってる。だが、俺にはもうこの道しかない。
話していた時のような怯えは見せず、ぐっと俺を見る緑谷と向き合う。あのパワーを好きに打たせる訳にはいかねぇ。開始直後に、凍らせる!
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち、今!!緑谷VS轟!!START!!』
開始の合図と共に氷結を放つ。が、とんでもない突風が緑谷の方から吹き荒れて木っ端微塵に割られる。そうすることは読めていた。だが、想定していたよりも威力は下だ。
「やっぱ、そう来るか。」
緑谷のパワーは脅威だが、上限いっぱい使うと自傷する。障害物競走、そして騎馬戦。奏との特訓で力のコントロールは覚えたみてぇだが、威力は落ちる。なら、自傷覚悟で打ち消してくると思っていた。一応、全力で放ってくる可能性も考慮して後ろに氷壁を作ったが、指ならここまでは届かねぇらしいな。
突風を生み出した緑谷の指は、腫れ上がっていてもう使い物にはならない。あれだけの怪我だ。痛みも酷いだろう。なら、そう何発も撃てるもんじゃねぇ。
もう一度氷結を放つ。そして、また指を犠牲にして破壊してくる。……なんでだ。何がお前をそこまで掻き立てる。
苛立ちに任せて氷結を放つが、その全てを防がれる。そのくせこちらには踏み込んで来ねぇ。
「耐久戦か、すぐ終わらせてやるよ。」
緑谷の観察眼は鋭い。耐久戦に持ち込まれちゃ不利んなる。氷結を放ち、緑谷がそれを破壊したと同時に走る。
『轟、緑谷のパワーにひるむことなく近接へ!!』
風圧を作り出した後、緑谷は痛みですぐには動けない。その硬直時間で奇襲をかける。
上半分が風圧で吹き飛ばされた氷を台にして、高さがある氷で緑谷を攻めてその上を走る。凍らされたくない緑谷は、これも破壊するしかない。風圧の生じる重い音と同時に、足場にしていた氷が砕け散るが、構わない。風圧の範囲外だった上空から、緑谷へと奇襲をかける。