第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
零れ落ちた本音は、思った以上に小さくて。私という存在がちっぽけな物でしかないと突き付けられたようだ。鬱々とした気分と真逆の歓声が通路にまで届く。始まる。焦凍と、瀬呂君の試合が。
『お待たせしました!!続きましては~こいつらだ!優秀!!優秀なのに拭いきれぬその地味さはなんだ!ヒーロー科、瀬呂範太!!VS、2位・1位と、強すぎるよ君!同じくヒーロー科、轟焦凍!!START!!』
勝負は、一瞬でついた。通路から見えるのは、とんでもない大きさの大氷壁。焦凍の、全力の氷結。
瀬呂君相手に狙って使うような代物じゃない。御しきれない程の怒りを込めた一撃だと思う。この凍てつく氷壁を見ても、きっとエンデヴァーさんの心は痛まないんだろう。こんなにも、焦凍の心は悲鳴を上げているのに。目の前で辛い思いをしている焦凍を救えないこの身が憎らしい。
「合わせる顔なんて、ないじゃない。」
ふらふらと、通路を後にする。観客席に戻る元気もない。……それでも、私は“私の価値”を示さなくちゃいけない。負けてはいけない。見せつけないといけない。全ては、焦凍の傍にあり続ける為に。
――
幾つかの試合が終わって、私と芦戸さんの出番がくる。フィールドに立って向かい合う私達に降り注ぐ観客達の興味と期待に満ちた声がガラスの板で隔てられたように遠く聞こえる。気分が高揚しているのか、私に対峙する芦戸さんはとても楽しげに見える。……彼女の目に、私はどう写っているんだろう。わからない。でも、少なくとも……楽しげには見えないんだろうな。
「お互い頑張ろ!」って言ってたけど、ごめんなさい。貴女には何もさせない。一瞬で、終わらせてみせる。