第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
「ああ緑谷!せっかく忠告したってのに!!」
『オイオイどうした、大事な初戦だ盛り上げてくれよ!?緑谷、開始早々――完全停止!?アホ面でびくともしねぇ!!心操の“個性”か!!?ぜんっぜん目立ってなかったけど、彼ひょっとしてやべぇ奴なのか!!!』
あの緑谷君の様子を見て、尾白君が叫ぶ。一度、尾白君は心操君の個性にかけられている。……一度受けたからギミックがわかっていて、それを緑谷君に忠告したってことかな。
『だからあの入試は合理的じゃねえって言ったんだ。』
『ん?何?』
『二人の簡単なデータだ。個人戦になるからまとめてもらっといた。心操、あいつヒーロー科実技試験で落ちてる。普通科も受けてたのを見ると、想定済みだったんだろう。あいつの“個性”は相当に強力なものだが、あの入試内容じゃそりゃポイント稼げねえよ。』
相澤先生が解説している間に、緑谷君がくるりと方向転換をしてフィールド外に向かってゆっくりと歩き始める。場外に出れば負けが決まる。なら、当然緑谷君の意志じゃない。心操君の“個性”は、“人を操る個性”で間違いない。
『ああー!緑谷!ジュージュン!!このまま心操の指示に従って場外に出てしまうのかー!?!?』
ふらふらと場外に向かって進む緑谷君に止まる様子は見られない。自力で“操る個性”を解除できる代物でないのなら、これで試合は決まる。……残念だ。あの“個性”さえ攻略できていたなら、緑谷君の勝利は揺るがなかったのに。
諦めて目を閉じた瞬間、空気の破裂するような音が響いた。そんなことできるのは……緑谷君の超パワーしかない。目を開けて、外を見る。そこには、場外ギリギリで踏みとどまる緑谷君の姿があった。
「超パワーを暴発させて解除した!?なんて無茶をするの、緑谷君……」
身体の自由を取り戻した緑谷君は、もう止まらない。心操君はその場を動かず、緑谷君に幾つも言葉を投げつける。それらに無言で返し、心操君に掴みかかった緑谷君。一発顔にもらったものの、気合の入った一本背負いが決まる。
『心操君場外!!緑谷君、二回戦進出!!!』