第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
1人静かに外で過ごしていたら、あっという間に時は過ぎたらしい。響き渡るアナウンスに従ってゲートを通ると、ユニフォームを脱いだ麗日さんとばったり鉢合わせた。
「至情さん!私達も観客席の方行こ!A組で席が用意されてるんだって。」
「そうなんだ。なら、皆の試合がしっかり観れるんだね。」
私達にも席が用意されているなら、試合を見ながら相手に対する対策も練れる。当然、そう考えるのは私だけじゃない。後になればなるほど激しい試合になっていくんだね。
手の内見せると次の試合には対策が練られ、かといって出し惜しみをしても負ける可能性が高くなる。全く、雄英らしいというか、なんというか……。
階段を上がって、用意してもらった席のある段まで来る。関係者入り口付近の、一番前の列。そこが、私達に用意された席だ。よく見えるフィールドの中央に、セメントで作られたバトルフィールドが用意されている。あそこで私達は戦うことになる。
皆が空いている席に適当に座っているのを確認して、私も適当に座らせてもらう。焦凍は次の試合だし、多分こっちには来ない。まぁ、念のために隣の席を取っておいてあげよう。
『一回戦!!成績の割に何だその顔!ヒーロー科、緑谷出久!!VS!ごめん、まだ目立つ活躍なし!普通科心操人使!!
ルールは簡単!相手を場外に落とすか、行動不能にする。後は“参った”とか言わせても勝ちのガチンコだ!!怪我上等!!こちとら我等がリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理はいったん捨て置け!!
だが、まぁ勿論命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローはヴィランを捕まえる為に拳を振るうのだ!
そんじゃ、早速始めよか!!レディィイイイ!START!!』
「何てこと言うんだ!!!」
プレゼントマイクの開始宣言と被るように、緑谷君の怒りの声が響き渡る。多分、相手に殴りかかろうとしたんだろう。叫ぶと同時に、緑谷君は走り出していた。確かに、走り出したはずだった。けど、たった一歩動いたその身体は電池を抜かれたロボットのように動かなくなってしまった。