第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
「奏ちゃんが相手か!手強いけど、勝つ気で行くよ!」
「うん。私も、負けるつもりはないよ。」
「うんうん。お互い、頑張ろう!」
ぴょんっと飛びつかれ、よろめきながらも芦戸さんを受け止める。いけない。私は、私のことに集中しないと。もう、私には試合の結果を見守ることしかできないんだから。
『よーし、それじゃあトーナメントはひとまず置いといて……イッツ束の間!楽しく遊ぶぞ、レクリエーション!!』
『参加する子はスタジアムに残って頂戴!次に備えたい子はスタジアムの周辺にいてくれるならどこにいてくれても結構よ!じゃあ、早速始めましょうか!』
ミッドナイトの言葉を合図に、スタジアムに空砲が上がる。レクリエーションに参加する気がない私は、焦凍と一緒にスタジアムから退場しようとする。
「あれ?奏ちゃんは参加しないの?」
「葉隠さん。うん、私は次に備えたいから。」
「えー?でもせっかくのチアだよ?競技に参加しなくても、応援団はできるじゃん!」
芦戸さんにぎゅっと抱きつかれ、拘束される。うっ、これはまた逃げられなくなる予感!A組女子の結束力の高さは、もう身に染みている。今度こそ逃げ切らねば!
「精神統一したいから、静かな所にいたいんだ。ごめんね?」
「うー、そう言われると無理強いできないね。わかった。奏ちゃんの分まで応援団するよ!」
「あはは。お任せするね。」
皆に手を振って、今度こそスタジアムを後にする。恥ずかしいチアユニフォームとはおさらばし、会場の外に出た。
レクリエーションが終わる頃には、また会場にプレゼントマイクのアナウンスが入るはず。壁伝いに歩いてすぐそこにある林の傍に座って、ゆっくりと息を吸って吐く。一対一のガチンコバトルなら、冷静さを保った者が勝つのが道理。普段よりも早い鼓動がいつも通りになるように、努めないと。