第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
『それじゃあ、組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったら、レクリエーションを挟んで開始になります!』
台に上がったミッドナイトが、Lotsと書かれたくじ箱を両手で持って会場にアナウンスをする。
『レクに関して、進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も、温存したい人もいるしね。んじゃ、1位チームから順に……』
「あの……!すみません。俺、辞退します。」
早速くじ引きを開始しようとしたミッドナイトの言葉を、尾白君が手を挙げながら遮る。せっかく最終種目に進出できてプロに実力を見てもらえる機会を得たのに、尾白君はそれを捨てようとしている。
「尾白君!何で……!?せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」
「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分、奴の“個性”で……」
まるで自分の事のように悲しむ緑谷君の悲鳴じみた声を聞いて、尾白君が苦しそうに事情を話す。騎馬戦の記憶がほぼない……それは、騎馬戦の記憶を個性によって消された。あるいは、個性によって意識が奪われていたと考えた方がいい。どちらかというなら、多分後者。尾白君のチームは、3位の心操チームだったかな?そうだとするなら、その心操って人が怪しいけれど。
緑谷君も同じ結論に至ったのか、他の組へと視線を向けた。それに倣ってそちらを見ると、いたのは紫髪の人。彼には見覚えがある。たしか……そう、普通科で宣戦布告しに来た人じゃなかったかな。
「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて、愚かなことだってのも……!」
「尾白君……」
尾白君は掴み損ねた何かを掴もうとするかのように、右手を握り締める。
「でもさ!皆が力を出し合い、争ってきた座なんだ。こんな……こんな、わけわかんないままそこに並ぶなんて……俺はできない。」
「気にしすぎだよ!本選でちゃんと成果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら、私だって全然だよ!?」
尾白君の言葉を聞いた葉隠さんと芦戸さんが、尾白君を説得しようと声をかける。けれど、それに首を横に振って答え、そして涙を堪えるように手で口元を覆う。