第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
あの、明らかにお腹が丸出しになりそうな服を、私が着る?いや、ちゃんと鍛えているからお腹は出てないし、着るのは問題ない。問題なのは、その短い丈の服を着るのは非常に恥ずかしいということ。だって、あれ明らかに胸目立つよ!胸の大きさが生死を分ける一品だよ!?
自分の胸を見る。私、大きくも小さくもない。次に八百万さんを見る。……発育の暴力。
うん。世の中には、似合う人と似あわない人がいる。
「……八百万さん、あっ、ごめんね、百ちゃんね。私腹痛になったから暫くお手洗いにいるね。うん。」
八百万さんと呼ぼうとしたら悲しげな顔をされたので、慌てて呼び方を変える。トレーをしっかり両手に持ち、そそくさと後ろに下がる。そんな私に返ってきたのは美しい微笑み。そして、がっしりと拘束される右腕。
「私達は一蓮托生です。逃がしませんわ。」
「あーっ!お、お救け!お救けを!!私にこれは似合わない!」
「さぁ、時間がありません。行きますわよ!」
「やだー!絶対無理ー!!!救けて、焦凍ー!!!」
トレーを持ったままで抵抗することもできず、ずるずると引きずられるように座っていた席から離れていく。セクシーなチアユニフォームを見て固まった焦凍に救けを求めるも、ユニフォームがあった虚空を見つめたまま、ぴくりとも動かない。ああ、ダメだ!焦凍がショートしてる!!
誰か!?と辺りを見回すも、誰も救けてくれる人はいない。むしろ、途中で会った麗日さんや耳郎さんが八百万さんに協力し、なすすべなく会場の更衣室へと引きずられていく。おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない!梅雨ちゃんに慰められるままユニフォームに着替え、葉隠れさんに丸見えのお腹をくすぐられ……そして、時は無情にもやってくる。
断頭台。もとい、スタジアムへのゲートから私の心とは裏腹の明るい光が差し込んでいる。私達女子は、男子の後ろに全員揃って並んでいる。見られてはいない。そう分かっているけれど、両手がぷるぷると震えてかさりと手に持ったポンポン同士が触れ合う音がする。
「大丈夫よ、奏ちゃん。よく似合っているわ。」
「そーそー!奏ちゃん鍛えてるからスレンダーだし!ほら、元気出してこー!」
ぴょんぴょんと元気いっぱいにジャンプをする葉隠さんは、とても楽しそうだ。私も、自分が巻き込まれていないのであれば楽しんだのに。