第11章 チアリーダーと、シリアスと、ガチバトル
たった1時間しかないお昼休憩は、言い表すなら“忙しない”。競技を終えた生徒は皆食堂に食べに来ているし、一般人もこの機会に是非ランチラッシュのお昼を!と食べに来ている。幸い食堂のおばちゃん達は熟練で、素晴らしい早さで捌いてくれたからお昼をゲットすることはさほど困らなかったけど、食堂の席には上限がある。やっと座れる席を見つけて、二人で頼んだお蕎麦に手を伸ばした時には30分は過ぎていた。
ゆっくりするには短すぎる時間だけれど、それはゆっくりしない選択をする理由にはならない。冷たいお蕎麦をつるりと食べれば、その喉越しの良さとおいしさでふにゃりと頬が緩む。ずぞぞーっと隣で蕎麦をすする焦凍の表情も、この休憩の間で随分マシになった。
「どうした?」
「あ、いや……その、大丈夫かなって……」
じっと見つめ過ぎたせいか、焦凍と目が合う。しどろもどろに返事を返すと、焦凍に頭をぽんぽんと撫でるように叩かれた。いや、だから私が慰められちゃダメなんだってば。
とはいっても、どうしたらいいのかも、何を言ったらいいのかもわかんない。とりあえず、気休めにでもなればいい。そう思ってぴたりとくっつくように距離を詰める。こうして触れ合っていれば落ち着くと、小さい頃から知っているから。
互いにぴたりとくっつき合ったままお蕎麦を食べ終わり、ごちそうさまと両手を合わせる。午後の部までは、あと10分程か。もうそろそろ移動しないと遅れてしまうかもしれない。席を立ち、机の上のトレーを持とうと触れた時。後ろから落ち着いた声が聞こえてきた。
「あら、ここにいらっしゃいましたの。探しましたわ。」
「八百万さん。どうかしたの?」
用事とは、どちらにだろう。一緒にチームを組んでたし、焦凍?首を傾げると、八百万さんは私ににこりと微笑んだ。
「百で構いませんわ。相澤先生からの伝言で、私達女子はこの服を着て応援合戦をしなければならないそうですの。」
困ったようにそう言って、ぴらりと私達に見せたのは……チアユニフォーム。それも、上下が分かれたセパレートタイプ。スカートの丈も随分短くて、セクシーだ。見せられた物の衝撃で、隣にいた焦凍が凍りついた。
「……マジ?相澤先生が、それ着ろって……?」
「マジ、ですわ。」