• テキストサイズ

人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第10章 騎馬戦、開幕!


「……どうなんだ?」
「ち、違うよそれは……って言っても、もし本当にそれ……隠し子だったら違うって言うに決まっているから納得しないと思うけど、とっ!とにかくそんなんじゃなくて……!そもそも、その……逆に聞くけど……なんで僕なんかにそんな――」
「……“そんなんじゃなくて”って言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがある。ってことだな。」

 らしさを取り戻し、ぶんぶんと首を横に振りながら否定する緑谷君に対して焦凍がたたみかける。否定ができないのか、ぴたりと動きを止めてしまった緑谷君を見て焦凍がゆっくりと口を開いた。

「俺の親父は“エンデヴァー”。……知ってるだろ、万年No.2のヒーローだ。もしお前がNo.1ヒーローの何かを持っているなら、俺は……尚更勝たなきゃいけねぇ。」

 拘束されたままの手首が、強く握りしめられてギリリと痛む。けれど、すぐにその手は緩められて、するりと滑るように右手へ移動して恋人繋ぎに変わる。シリアスな場面で一体何を!?と思って焦凍の顔を盗み見る。その顔は、ヒーロー志望にしてはあまりにも酷くて……そう、復讐鬼のように見えた。私の手がその心の慰めになるのなら、枷になるのなら、幾らでも握っていてくれていい。だから、その手を緩く握り返す。

「親父は極めて上昇志向の強い奴だ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが……それだけ、生ける伝説・オールマイトが仕方なかったらしい。自分ではオールマイトを超えられねぇ親父は――次の策に出た。」
「何の話だよ、轟君……。僕に、何を言いたいんだ……。」
「“個性婚”、知ってるよな?」

 その言葉を聞いて、緑谷君がごくりと息を飲む。そう。エンデヴァーさんは自分の個性では限界があると悟り、自分の子供にオールマイトを超えさせようと考えた。

 “個性婚”――それは、超常が起きてから第二~第三世代間で問題になった自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選ぶ、倫理観の欠落した前時代的発想。

 No.2の実績とお金を使い、エンデヴァーさんは己と逆の個性を持つ焦凍のお母さんを手に入れた。そうすることで、個性のデメリットを打ち消せる子供を作ろうとした。その結果で生まれたのが、焦凍。
“半冷半燃”――交互に使うことで個性のデメリットを打ち消せる、最強と言っても過言じゃない個性を持って、焦凍は生まれてきた。
/ 272ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp