第10章 騎馬戦、開幕!
ゲート内はフィールドと外を繋ぐ道だけじゃなく、他のゲートに繋がる通路も勿論ある。それぞれのゲートにはちゃんと張り紙がしてあるから、一般人が間違えて入ってくることはない。その通路を通り、誰も来ない学校関係者専用ゲートの入り口で焦凍は足を止めた。
ぴりぴりとした雰囲気を纏う焦凍と、その雰囲気に若干怯えた様子を見せる緑谷君が互いに壁に背を向けて向かい合う。焦凍から発せられる冷たい威圧感が、空気を凍らせていくようだった。
「あの……話って、何?早くしないと食堂すごい込みそうだし……」
痛い程の沈黙に耐えきれなくなった緑谷君が口を開く。けれど、焦凍は何も言わずにただ緑谷君を睨みつける。そして。
「気圧された……てめぇの誓約を破っちまう程に。」
“誓約”という言葉を聞いて、緑谷君がハッとした様子で私の手首を掴んだままの焦凍の左手を見る。すぐに左の炎の事だと気がつく緑谷君は、やっぱり頭の回転が速い。
「飯田も、上鳴も、八百万も、常闇も、麗日も……感じてなかった。最後の場面、俺と奏だけが気圧された。本気のオールマイトを身近で経験した俺達だけ。」
「……それ、つまり……どういう……」
「お前に同様の何かを感じたってことだ。」
焦凍の言葉を聞いて、緑谷君がひゅっと息を飲んだ。焦凍に威圧されて怖がっていた緑谷君の表情がサッと変わる。何を言われるのかと、怯えた顔だ。
「なぁ……お前、オールマイトの隠し子か何かか?」
あーっ!随分とストレート!ねぇ、焦凍。これがかなりデリケートなところを聞いてるってわかってるのかな!?あ、いや、多分わかってるよね。ただ、気を遣う程の余裕が焦凍にないのね。エンデヴァーさんを見るときと同じくらいの眼力を緑谷君に向けている時点で気遣いが吹っ飛んでいるのを察するべきだったわ……。
緑谷君、大丈夫かな……。そう思って様子を伺うけれど、緑谷君はさっきまでの痛い所を突かれた!って表情からぽかーんとした表情に変わっている。……これは、緑谷君が隠し子であることを伝えられていないか、本当に隠し子じゃないかの二択。まぁ、興味がないと言ったら嘘になるけど、それを無理に暴きたい訳じゃない。大事なのは、ここから。