第10章 騎馬戦、開幕!
「奏。」
「焦凍。」
後ろから話しかけてきた焦凍の方へ振り向く。表情は、やっぱりどこか強張っているように見えて少し怖い。それでも、私の前だからか、いつもと同じように振舞おうと努力しているように見える。
「……さっきの騎馬戦ではやってくれたよね。まんまと1000万取られちゃった。」
「あれは、飯田がいなきゃ無理だった。」
「凄いスピードだったねー、あれ。咄嗟に行動したつもりだったけど、追い付けてなかった。」
「……なぁ、奏。」
「ん?」
じっと左手を見つめた後、焦凍は私を真剣な目で見つめる。
「緑谷に俺の事を話そうと思う。」
「……それはまた、いきなりだね?」
焦凍が、意味もなく自分の事を相手に話す訳がない。そして、最初から話す気があるのなら宣戦布告した時にでも話してるはず。……焦凍が話すと決めた理由は、緑谷君から感じた“オールマイトと同等のあの気迫”が原因かな?――どちらにせよ、好都合だ。
「奏、あの時一緒にいたお前ならわかるだろ。アレは、オールマイトと同じだった。あいつは、オールマイトと同じ個性を持ってんじゃねぇか?」
「確かにオールマイトのような気迫を私も感じたよ。でも、オールマイトと同じ個性ってことは、緑谷君がオールマイトの子供だって言ってるようなものだよ?流石にそれは無いんじゃない?」
仮定の話になるけど、私は緑谷君が個性を扱いきれない理由は身体を鍛えてなかったからじゃないかと思ってる。子供の身体は脆い。焦凍程じゃないにしろ、結構鍛えている今の緑谷君だって扱えるのはたった5%。そんな暴力的なまでの力が4歳の子供に発現していたら……間違いなく、死んでいる。つまり、“自らを傷つけないように本能が個性を抑え込み、発現していなかった”という仮説。