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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第10章 騎馬戦、開幕!


 麗日さんの声を聞いて、私も緑谷君の方を向く。変わらず、どんよりと暗い影を背負って俯く緑谷君が震える声でごめんと謝る。
ああ、そうか。ずっと俯いてたから緑谷君はまだ気づいてなかったか。麗日さんと顔を見合わせ、笑いながら一緒に後ろにいる常闇君を指さした。不思議そうな顔をした緑谷君と常闇君の目が合う。

「お前の初撃から、轟は明らかな動揺を見せた。」
「……っ、あっ……!」

 常闇君の後ろに控えていたダークシャドウがゆっくりと常闇君の隣に並ぶ。それを見た緑谷君の目が大きく見開かれ、そして潤んだ。緑谷君の目にも映ったんだろう。ダークシャドウの嘴に挟まった白くて長い物――615と書かれた鉢巻きが。

「1000万を取るのが本意だったろうが……そう上手くはいかないな。」
「……ぁあ……!」
「それでも一本、警戒の薄くなっていた頭の方を頂いておいた。緑谷、お前が追い込み、生み出した……轟の隙だ。」

『4位!緑谷チーム!!以上の4組が最終種目へ進出だぁあああー!!!』
「ぉあああぁあああああああー!!!」

 プレゼントマイクのアナウンスが引き金になり、緑谷君の目に溜まっていた涙が爆発した。噴水に例えるには生易しいぐらいの涙が目から噴き出し、その勢いで緑谷君の身体が崩れ落ちる。めちゃくちゃ緊張して、そして最終種目へと進出できた嬉しさはわかる。わかるけど……涙腺どうなってるの、緑谷君!?
おいおいと泣き続ける緑谷君を麗日さんと一緒に慰める。それでも、感激と安堵の渦から戻ってこられないのか緑谷君の涙は止まらない。むしろ、慰める程悪化してる気さえしてくるんだけれども?

『それじゃあ、1時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜぇ!じゃあな!……おい、イレイザーヘッド。飯行こうぜ。』
『……寝る。』 

 プレゼントマイクと相澤先生の漫才のようなアナウンスを聞いて、フィールドに立っていた皆が外へ向かって歩き出す。1時間だけのお昼休憩か。思ったよりも短いなぁ。
今日は一般の人も多いし、ランチラッシュの食堂が混むことは間違いない。麗日さんもわかっているんだろう、「ほら、お昼行こうデク君。」と未だに涙の止まらない緑谷君の背中を押す。背中を押され、ぐしぐしと腕で涙を拭いながらゆっくりと歩き出した緑谷君と並んでゲートまで歩いていく麗日さんを目で送る。さて、私も焦凍と一緒にお昼食べに行こう。
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