第10章 騎馬戦、開幕!
緑谷君の声を聞いて、ちらりと下を確認する。広く、薄く凍らせたようで、焦凍の近く――大体中央寄りのフィールド――は騎馬を巻き込んでほとんど凍り付き、安全に降りることができなくなっている。そして、凍っていない左側のフィールドでは凍らされずにすんだチームが激しい取り合いを繰り広げている。
私達が安全に降りられる場所は、焦凍の後ろ……つまり、右側のフィールドにしかない。自分を狙う騎馬を纏めて片付けつつ、私のガス切れを読んでサシのフィールドに誘い込もうとしている。
「このままじゃ、無事な場所も凍らされる可能性がある!ちょっと怖いけど、これから先のことを考えるとあそこに降りるしかないと思う。」
「完全に私の弱点を突いてきたね。焦凍から逃げ切る策はある?」
「……確実とは言えない。でも、策はある!それに、このまま飛び続けたら至情さんが困るだろ!僕達はチームだ、皆でがんばろう!」
緑谷君の力強い言葉を聞いて、常闇君と麗日さんが騎馬を組むために繋いだ手をぎゅっと握ってくる。
「その通りだ。組んだ以上、俺達はチーム。至情にばかり任せたりしない。」
「そうだよ!皆でがんばろっ!」
全く、皆かっこいいなぁ!次の競技が何かは知らないけど、ライバル関係になるのは間違いないのに。大丈夫、緑谷君の回転の速さと中距離で攻撃できる常闇君もいる。せっかく組んだんだ。チームメイトを信じよう!
「全く、男らしい返事だね!今降りるなら、私の上限にもまだ余裕がある。必要だったら遠慮なく使ってね!」
「わかった。頼りにしてるよ、皆!」
緑谷君の言葉に皆が同意したのを見て、私達は焦凍の張った罠の中へと飛び込んでいく。円を目的の場所に作れば、降りることを察知した焦凍達が勢いよく迫ってくる。ぐんぐん地上へ近づいて、最後の円で一気にスピードを0にまで落として着地すると、私達と焦凍達は氷の壁で覆われた狭いフィールドで向かい合った。
「皆、轟君は飯田君を巻き込まないよう左側には氷結を伸ばせない。だから、距離を保ちつつ、左寄りでキープして。」