第10章 騎馬戦、開幕!
麗日さんが止めるのも聞かずに、緑谷君は沢山の人がいる方へと走っていってしまった。おどおどしているかと思ったら、こういう行動力はある。……緑谷君って、やっぱり不思議だなぁ。
「ね、ねぇ、至情さん。」
「ん?どうしたの、麗日さん。」
「そのね、こういうこと聞くんはおかしいかもしれんのやけどね?」
人差し指と人差し指を合わせ、麗日さんが言いにくそうに視線を右往左往とさまよわせる。そして、一度ぎゅっと強く目を瞑ってから私を見つめる。
「……轟君と組まなくてよかったの?」
「焦凍と?どうして?」
まさか、そんなことを言われるとは思っていなくて思った言葉がそのまま口から出る。
「至情さん強いし、轟君と仲もいいでしょ?だから、一緒にチーム作ってるんだろうなって思ってて。……でも、轟君が誘ったのは飯田君で、至情さんは私達と組んだ。」
そして麗日さんから聞かされたのは、飯田君がどうして緑谷君の誘いを蹴ったのか。飯田君が緑谷君の誘いを蹴ったのは、焦凍に誘われていたというのもある。でも、それ以上に緑谷君に挑戦したいからだって言ったと。
「でも、轟君、至情さんが緑谷君に話しかけた時驚いてた。あれって、ほんとは至情さんを誘いたかったけど、断られたんちがうかなって……。」
「それは……」
「あ、あのごめんね!?私のこと必要としてくれたの、すっごく嬉しいんよ!?ただ、その、なんでかなって、そう思っちゃって……」
まるで緑谷君のようにわたわたと両手を振りながら慌てる麗日さんを、大丈夫だからと落ち着かせる。でも、そっか……麗日さんは悩んでるんだね。多分だけど、麗日さんは友達で固まりたかったから緑谷君のチームに入ったんだと思う。でも飯田君の考えを聞いて、それが甘い考えだったんじゃないかって自分を責めている。
麗日さんのように、仲のいい人で組みたいって思う気持ちは間違いなんかじゃない。そして、私みたいに能力で組もうとするのも間違いじゃない。何にでもメリットデメリットは存在して、何が正しいっていうのはきっとない。だから、そんな泣きそうな顔をしなくていいのに。
なるべく優しい声になるように意識して、麗日さんに微笑む。