第10章 騎馬戦、開幕!
麗日さんを探して周りを見てみると、もうすでに何人かはグループになって固まっているのが見える。焦凍と話をしていたからか、幸い声をかけてくる人はいない。ゆっくり周りを見渡しながら探していくと、ようやく麗日さんが緑谷君と一緒にいるのを発見する。
そうか、麗日さんは緑谷君と組むのか。都合がいい展開に口元が上がる。こっそり後ろから近づいてみると、どうやら二人は飯田君にフラれてしまった後だったらしい。なら、私の売り文句は一つ。
ちょっと驚かせてみたくて、緑谷君の背後からそーっと近づく。すると、飯田君をチームに入れて緑谷君と睨み合いをしている焦凍の目と合ってしまった。なんてタイミングのよろしくない。焦凍が驚きで目を見開くのを見て、気まずさが私を襲う。でも、これが私の最善なんだ。
「ねぇ、緑谷君。超スピードで地面でも、空でも駆けれる個性は入用じゃないですか?」
「し、至情さん!?」
後ろから緑谷君の両肩に手を置いて売り文句を口にすると、緑谷君と麗日さんが揃ってビクッと肩を跳ねさせる。二人ともかわいい反応してくれて嬉しいんだけど、せっかくの売り文句は聞こえてたかな。
そんな心配は、大きな目をぐぐっと開きながら早口でまくし立てる緑谷君の姿が一蹴する。
「い、いいの至情さん!?僕達としても、機動力のある至情さんと組めるのはめちゃくちゃ嬉しいよ。けど、至情さん2位だよね!?いいの!?」
「私、元々は麗日さんを探してたの。でも、緑谷君と組むんでしょう?なら、混ぜてもらおうかなって。」
「私?でも、なんで?」
自分がスカウトされるとは思ってなかったようで、不思議そうに首を傾げる麗日さん。説明しようとする前に、腕を組んで指で唇を触る、所謂ブツブツモードに入った緑谷君が口を開いた。
「……そうか、至情さんがスピードを出すためには強く地面を蹴って、自力である程度スピードを出す必要がある。なら、軽い方が少ない力で早く動ける。それに、軽ければ至情さんは空も駆ける騎馬を作れる!」
「ほわぁ、なるほどぉ。」
ぽんっと手を叩く麗日さんと、当たってる?と目をキラキラさせる緑谷君に微笑む。緑谷君の言う通り、麗日さんがれば私は個性を節約していても飯田君の上位互換になれるんだ。