第9章 体育祭、開催!
心配そうに核石を見ていたけれど、大して色が変わってないことは見たらわかるはず。声も心配そうだったのが安心した声に変ったことだし、そろそろ手を離してもらおうと焦凍の方を向く。
「もういいでしょ?そろそろ手を離して欲しいんだけど……」
「もう少し見る。」
「おぅ……。」
マジか。げんなりした気分でした返事を了解だと取ったのか、焦凍は嬉しそうに手を解放することなく眺め続ける。見るのは構わないから、せめて手を離して欲しい……!けれど、その心の中の願いは当然のように届くことはなく、むしろ空いている手で核石にまで触れ始める。使った分チャージされるのはいいけど、恥ずかしいんですってばー!!!
そこまで思ってふと気がつく。焦凍が私の右手に触れる時、必ずと言っていいほど核石に触れることに。
「焦凍って、核石触るの好きだね?」
「ああ。綺麗だから、つい触りたくなる。」
すり、と焦凍の指先が核石を撫でる。きらりと輝く核石を嬉しそうに眺める焦凍の顔が幼く見えて、吸い寄せられるように目が離せなくなる。
私も、核石の色は気に入っている。深い蒼に染まったアクアマリンのようで、綺麗だとも思う。ただ、これが自分の心を表しているのかと思うと複雑だ。だって、私の抱く感情はこんな綺麗な代物じゃないから、なんだか詐欺をしているみたいじゃない。
『1年ステージ、第一種目もようやく終わりね!それじゃあ結果をご覧なさい!』
響き渡るミッドナイトのアナウンスを聞いて、全員がゴールし終わったことを知る。そろそろ、次の競技説明が始まるかな。
私の手を離し、立ち上がった焦凍に続いて私も立つ。ミッドナイトのいる台に近づくと、会場にぐるりと取り付けられたディスプレイと、謎技術で私達の前に現れたディスプレイに顔写真付きの順位が表示されていく。……この写真、いつ撮ったんだろう?
表示された順位の中に、青山君の顔がない。細身で貧弱なイメージを持たれやすい青山君だけど、彼もヒーロー科の一員。そんなに足が遅いはずも、ましてや体力がない訳でもない。……42位は身に着けている装備からしてサポート科。やっぱり、侮れないなぁ。