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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第9章 体育祭、開催!


 焦凍達の後追うように走る。私のようにスピードを保つことのできない緑谷君が徐々に失速し、その緑谷君に爆豪君と焦凍が並ぶ。私が空へと飛び上がって青い円を潜った瞬間、緑谷君は手に持った鉄の板を地雷の埋まった地面へと叩きつける。爆豪君、焦凍、そして緑谷君を巻き込んだ爆発が目の前で起こった。ここまでは想定通り。
――想定通りいかなかったのは、運動エネルギーの増加で飛んだ私と、爆風で上手い具合に飛ばされた緑谷君が全く同じタイミングで地雷原を通過したこと!

「無茶苦茶するね、緑谷君!」
「そりゃ、負けたくないからね……!」

 爆豪君や焦凍の妨害のないまま、私と緑谷君が一歩も譲ることなくひた走る。ゴールまであと50m程。そう、あのときの個性把握テストと同じ50m。
私の走る道に青い円を幾つも作る。地面を蹴って、円の中へと勢いよく飛び込む。宙に浮かんだ私の身体にかかる運動エネルギーが円を潜る度に強く、強くなっていく。

「5%を維持して、走るっ……!」

 節約しているとはいえ、そこそこのスピードで低空を飛ぶ私と、それに並ぶ勢いで緑谷君が走る。もう、どちらが勝つかわからない程の勝負……!
緊張で、何の音も耳に入ってこない。あと少し、あと少しでゴールに手が届く……!

暗いゲートの中で私と緑谷君がデッドヒートを繰り広げる。そして、ゴールの向こうに先に手が届いたのは――

『なんてこった、序盤の展開から、誰がこの結末を予想できた!?終盤のデッドヒートを制したのは、緑谷出久だーっ!!!』

 ゲートを通り抜けた後、失速した身体は地面に近づいて靴底がざりざりと地面を削る。最後の最後で活性を使って飛んだのに、負けてしまった。
ちらりと右手の核石を見る。透き通った藍色をしていた核石の端に黒が滲み始めている。これが完全に黒く染まってしまうと個性が使えなくなる。けど、この程度なら使ったのは10%くらいでまだ余裕がある。こんなに余裕があったなら、全力を出していれば私は緑谷君に勝てたのに。悔しい……!
 
 ……終わってしまったことを考えても仕方がない。節約して勝つと決めたのは自分で、最後に全力を出さなかったのもまた自分。だから、私がすべきことは私を負かした緑谷君を称賛することだよね……。落ち着くように一度深呼吸をして、息を切らせている緑谷君の元へと歩いていく。
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