第9章 体育祭、開催!
私の個性には一日の使用上限がある。例えるなら、MPのようなもの。このMPを回復する手段は一応ある。睡眠を取ること、そして……特定の人物に核石を触ってもらうことの二通り。
睡眠は、個性を使っただけ眠らないと回復しない。それどころか、一度寝てしまえば回復するまで自力じゃ起きることができない。つまり、ちょこちょこ回復するのには全くと言っていいほど向いていない。
次は核石に触れてもらう方。これは睡眠とは逆で、ちょこちょこ回復するには丁度いいけれど、完全に回復させるには時間がかかる。触れる相手は核石が輝く相手ならだれでもいいけど、困ったことにどういった基準で相手が決まっているのかわかってない。唯一私が知っている条件の合う人、それは焦凍だ。
焦凍にお願いしたら例えライバル関係だったとしても回復させてくれると思う。ただ、個人競技である以上は絶対とは言えない。絶対ではないのだから、私は回復ができないものだと考えてMPを節約しないといけない。
“エネルギー操作”やサーベルを呼び出す程度なら消費は微々たるもの。でも、人魚姫だけは一度呼び出す毎に40%は持っていかれる。最終種目で人魚姫を使う可能性を考えて、消費は60%までに抑えないと!なら、私が取る手段は一つ。
ミッドナイトの「スタート地点に並びまくりなさい!」の声を合図に、スタート地点である出入口ゲートに皆がぞろぞろと並んでいく。横並びになれない以上、皆ゲート前に立とうとぐいぐい身体を割り入れようとしている中で私はスペースの広い後方を陣取った。
皆の集中力が高まる中で、ゲートに3つ並んだライトが1つずつ点灯していく。3、2、1、――
「スタート!」
ミッドナイトの声を合図に、私は上へと飛び上がる。ゲートの高さは会場の2階分と随分高い。私が下を走る皆を飛び越えていくには十分すぎるスペース。
飛んだ先に等間隔に並べた円を作ってやれば、持続的にスピードが加速する。ぐんぐんと勢いを増した身体は弾丸のように飛んで、ゲートを僅か数秒で潜り抜ける。身体がゲートを通り抜けた瞬間、冷気が身体を撫でた。予想通り、ここで焦凍が仕掛けてきたみたい。
ゲートは狭いから、いつぞやのマスコミ騒動のように混雑するのは簡単に予想できた。そして、これ幸いと焦凍が氷結で皆の足を止めるだろうことも想定済み。ならば、私が取るべきは速攻。上手くいってよかった。