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人魚姫は慟哭に溺れる【ヒロアカ※轟夢】

第8章 体育祭、その前日譚


 緑谷君はぎゅっと強く手を握り締め、その拳を火が灯った瞳で見つめる。これで、緑谷君はようやくスタートラインに立った。この先に、私の出る幕はない。むしろ、余計な手を出さない方がきっと強くなってくる。後は、この5%の力が焦凍の氷結に勝てるか否かだけど……格上相手でも知恵を振り絞って向かっていく緑谷君だから、きっとなんとかなる。これで、何の心配もなく体育祭に挑めるようになったというもの。残りの時間は、私自身と焦凍の鍛練に当てよう。

「至情さん、本当にありがとう!やっと、個性をちゃんと使えるようになった気がする!」
「お役に立てたならよかったよ。でも、お手伝いしたからって体育祭で手は抜いたりしないから、そのつもりでね。」
「勿論!僕も、本気で向かっていくよ!」

 とん、と軽く拳を当てて笑い合う。さて、じゃあ私はそろそろ帰らないと。
緑谷君とオールマイトにそろそろ帰ると伝えて訓練場の入り口の方へと足を向ける。すると、後ろからオールマイトに呼び止められた。

「至情少女!少し、気になったことがあるんだが……君は、他のクラスの子に比べて随分と個性を扱い慣れているように思う。君を鍛えたのは、もしかして―……」
「はい。想像していらっしゃる通り、エンデヴァーさんに修行をつけてもらってます。」
「やはり……!なるほど、ありがとう至情少女。」
「いえ。では失礼します。」

 一度礼をしてから改めて訓練場の入口へ向かう。オールマイトはどうして私の師に興味を持ったんだろ。……あれかな、どうやって人に教えたらいいかわからないからとか?授業の度にめちゃくちゃ新人教師感でているし、相変わらず手にはカンペも持っている。No.1ヒーローだからって、なんでもできるわけじゃないんだね。うんうん。ただ、もしアドバイスが欲しくて聞いたのならやめた方がいい。教師としては最悪だろうからね、エンデヴァーさん。
 のほほんとそんなことを考えながら帰宅している私は知らない。緑谷君とオールマイトがどういう会話をしているのかも。私が、どんな風に二人の目に映っているのかも。何も知らなかった。
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