第8章 体育祭、その前日譚
「今まで個性を使ってきた感覚と比べてすっごく軽かったでしょ?……あれで全力の何%ぐらいかわかる?」
「……えっと。」
ものすごく言い辛そうに頭を掻きながらそっぽを向く。これは、あれだね。何%とも言えないくらい弱かったのね。でも、これで活性に対する恐怖心は無くなったはず。腕の調子を確かめるように、手を握っては開く緑谷君に話しかける。
「まぁ、これで10%が軽いって言うのはわかったでしょ?次は、緑谷君が試したい力加減でかけてあげる。どれくらいから試したい?」
「えっと、じゃあ……とりあえず50%で。」
「了解。」
リクエスト通り、50%の強化を腕にかける。もう一度パンチを打ってもらうけれど、これも軽そうだ。それでも、次に100%……つまり私の言った2倍に挑戦するのは少し怖いようで、顔がこわばっているのが見える。まぁ、進んで腕を壊したいって思う人はいないものね。でもさ……
「そんなに怖がらなくても、いつも緑谷君がしてる無茶に比べたらなんてことないよ?いつも自分の何倍の筋力出してると思ってるの。2倍なんて軽い軽い。」
「確かにそうかもだけど、改めて聞くととんでもない……!」
そりゃそうだよ。たった数%の力を出すだけで爆発的な力を生み出す個性だよ?砂糖君の個性が泣いちゃうって。
「うーん、緑谷少年。私が思うに、2倍でも問題なく打てると思うよ。遠慮なくかけてもらいなさい。」
「うっ、オールマイトがそういうなら……!」
「うんうん、頑張れ緑谷君!」
その後も、徐々に活性の度合いを上げながら緑谷君にパンチを打たせていく。全力の1%を把握し、1%ずつ繰り上がるように活性を調節して緑谷君に活性をかける。これを数回、私が残れる時間まで繰り返した時だった。
「~っ!これが、限界みたい、です!」
丁度超パワーの6%に挑戦した時、初めて緑谷君の腕に軋みが生じた。腕を見せてもらって軽く触診してみたけれど、骨が折れている気配はない。ただ、私も医療系にそこまで詳しいわけじゃないから、ちゃんと後でリカバリーガールにチェックはしてもらってねと伝えておいた。
「つまり、緑谷少年の今出せる力は5%ということになるね。」
「ですね。どうかな、力の加減は掴めそう?」
「……うん、大丈夫。どれくらいが5%に当たるのか、大体わかった!これで、怪我をせずに打てる!」