第1章 新生活
眠い目を擦り、お湯を沸かす。
顔を洗いテレビをつけ、パンを焼く。
今日は1日用事がないから家でゆっくり過ごそう。
コーヒーをいれ、パンと一緒に食べながらふと思った。
少し前まで、朝はご飯派だったな。
でも、彼はパン派で…。
一緒に過ごすうちに私も朝はパンを食べるようになった。
「あー!もう!いちいち私の中に出てくるな!」
もぐもぐと残りの朝ごはんを片付け、服を着替える。
本当は、一日中家にいる予定だったけど、家にいても葵のことを思い出してしまうから外出することにした。
電車で2駅のところに大型のショッピングモールがある。
服などの買い物をする時は決まってここに来る。
とても広くて、1日いるなんて余裕。
「か、可愛い…」
大好きなブランドのショーケースに、自分好みのワンピースが飾られている。
「欲しい…欲しいけど、新社会人にはきついよ…」
まだ初任給も貰っていない私は、ショーケースの前で15分も迷ったあげく、今月の食費を削ることを覚悟して店内に入った。