第1章 新生活
目を覚ますと横に葵が寝ていた。
私は、寝顔を見つめる。
少しだけ口を開いた間抜けな顔。
整っているとは言い難いけど、どこか幼さが残っていて可愛く思える。
「ん…ももは…」
「ごめん、起こしちゃった?」
「んー…」
そう言ってまた眠りにつく葵。
寝ぼけてただけなのかもしれない。
葵の頬を軽く撫でる。
少しだけ、葵の顔がほころんだ。
その顔を見ると何故か眠くなって、私もまた眠りについた。
はっと、目が覚め時計を見ると針は10を指している。
慌てて飛び起き洗面所まで行ったところで、今日は土曜だったと思い出す。
もう一度寝直そうとベットに戻る。
「葵…?」
葵がいるはずなのに、ベットにはぐしゃぐしゃの布団しかない。
布団を剥がしたところで我に返る。
「あー…」
葵がここにいるはずはない。
あれは夢で、現実じゃない。
数日前に、電車で葵を見かけてからというもの、彼の顔が頭から離れない。
まだ葵と決まったわけじゃないけど、あんなに似ている人なんているのかな。
世界には3人は似ている人がいるっていうけれど、あれは、似ているなんてレベルじゃなかった。