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蟲姫

第2章 蟲睦村(むしむつむら)


暫く歩き、目的の村に到着したギンコ。村は活気溢れる、とまで行かなくともそれなりに活気があった。
「もし」
「ん?ああ、その木箱…あんた蟲師か」
「ええ、まぁ。ちっとばかし雲行きが怪しいんで今晩泊まれるところを探しているんだが」
「あー、まぁなあ。この村は宿1件しかなくてな。まだ空きがあるかどうかは…」
「まぁ当たるだけ当たってみます」
そして村人に教えて貰った宿に足を運ぶと、ちょうど最後の一部屋が埋まったところだったそうだ。
「そうか。どうしたもんかな…」
野宿など慣れてはいるが、さすがに今から野宿できそうなところを見つけるにしても骨が折れるだろう。
考えあぐねていると、宿の女将が遠慮がちにひとつの提案をしてきた。
「あの…あまりおすすめは出来ませんが、この村から少し離れた所に湖があるんです。そのすぐ近くに蟲姫が暮らしている小屋がありまして、そこなら確実かと」
「蟲姫…。ちなみにそこなら確実、というのは」
「村の人々も訪れる蟲師も、皆蟲姫を気味悪がって近付かないんですよ」
「なるほど。情報感謝します」
宿を出て湖の方へと足を向けるギンコ。暫く歩き、さすがに疲労を感じてきた頃に漸く見えてきた小屋と湖。空はいつの間にか厚い雲に覆われていた。
「あら、蟲師の方がここへ来るだなんて珍しい」
突然聞こえた澄んだ声。声の主を見上げれば、そこには緋袴…巫女装束に身を包んだ少女がいた。
「あんたが"蟲姫"かい?」
「ええ、そうよ。っていうの。貴方は?」
「俺は蟲師のギンコだ。迷惑でなければ1晩泊めてもらいたいんだが」
「私は構わないけれど…、村人達からはあまりいい顔されなくなるわよ?」
そう言いながらが手を伸ばすと、その先には蟲がいた。
(ほお…これはこれは)
蟲煙草を吸っているギンコがいるにもかかわらず、彼女の周りには少しの蟲達が集まっていた。
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