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蟲姫

第2章 蟲睦村(むしむつむら)


「お前さんも蟲を寄せる体質か」
「ええ。見たところ貴方もそうみたいね」
「村人達の態度は"それ"故か?」
ギンコが問うと、はふふっと柔らかな笑みを浮かべて答えた。
「やぁね、それくらいじゃ村の人達は私を化け物だとか言って遠ざけたりしないわ」
では何故?そう問おうとして彼の口は止まる。
「私はね、簡単な命令なら蟲を従わせることが出来るの。彼らが私を遠ざけたのはそのせいよ」
だって気味悪いでしょ?蟲を従えるチカラなんて、そう悲しげに笑みを浮かべて言う彼女は儚く見えた。
「だからね、私は彼らに応じたの。化け物って迫害されるよりは一人でいる方が村人も私も、余計なことを気にしなくて済む。幸い、ここには綺麗な湖があるし木の実や果実もそれなりに豊富だから食事にも困らないわ」
遠くを見つめて口にする。しかしギンコは彼女が本当は村で暮らしたいのではないかと感じた。
「さて。湿っぽい話はこれくらいにしましょう?何も無いけど、部屋なら一部屋空いてるから好きに使ってちょうだい」
「あ、ああ。悪いな」
「いえいえ」
今度はニッコリと年相応の可愛らしい笑みを浮かべる。ころころと表情が変わる彼女に、ギンコはいつの間にか惹かれ始めていた。
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