第2章 右目を追う
彼が私に触れたときの、身体中が熱く痺れるような感覚。
「・・・あ?」
「・・・確かめていい。私が本当に、何もされていない、と。・・・少しだけなら」
「・・・お前、・・・」
抑えられなかったのだと思う。
自分の欲求を口にした途端に後悔した。
幸村様は今でも薩摩で奮闘しておられるのだ。
それを終えるまでは幸村様と共に在るべきだと、私は自分を制してきた。
なのに今、それをまた自分で崩そうしている。
止められないのだ、自分が。
目の前のこの人に触れたくて。
「・・・口開けろ、紫乃。」
指示通りに開けたのではなく、彼の指が私の顎をカクンと下に落としたので、口が開いた。
「んっ・・・ふ、ぁ・・・」
そこへするりと舌が入ってきて、早々に舌が口内をかき回す水音が静かな林に響き渡っていく。
「政っ・・・んっ・・・んんっ・・・」
座り込んだところをさらにさらにと倒されていき、ついにはしっかりと頭の後ろが草の上に落ちていた。
カシャンと鎧がしなる音がする。
その表面は冷たいのに、重なっている唇は不釣り合いなくらいに熱かった。
やがて唇は離された。
「こっち向け」
「えっ・・・」
くるっと手先だけで彼は私の体を転がした。
うつ伏せにされて、目の前には自分の体の下に広がる草の地面しか見えなくなる。
そんな私の上、背後に覆い被さっている政宗殿の体の熱気が、草のせいで冷えていた私の背に伝わってきた。
その感覚は、触れられていないのに、熱気だけでぞわぞわと背一面を快感で覆いつくした。
「な、なんだ、この体勢はっ・・・一体何を、」
私の視界の中で、彼は自身の右の籠手(こて)を外した。
露になったその右手は、次の瞬間、私の視界から消えた。
「ああっ・・・! や、・・ま、政宗殿っ・・・!」
その手は体の下に潜り込んできて、胸元を割って浸入してきたのである。
「あっ、だ、だめだ・・・やめっ・・・あ、あ・・・」
うつ伏せの体を支えていた腕が快感に耐えきれず前へとずれていき、肩もそこへ沈んでいった。
胸元にある彼の手に、胸を押し付けている形になっていく。
そしてさらに沈んでいく。
柔らかさを味わうような彼の手の動きがたまらなく気持ち良かった。