第2章 右目を追う
こちらは政宗殿に会えたことで嬉しさが込み上げてきたが、彼からしたらそうではなかった。
まずは見知らぬ忍に抱えられている私の姿に、表情がみるみる竜から鬼のそれへと変わっていく。
「誰だ、テメェ・・・! 紫乃を離しやがれっ!」
何も答えない風魔殿の代わりに、私が答えた。
「ま、政宗殿! この者は松永に雇われている忍で・・・」
「あぁ"!? 松永の手先か!?」
ああ、違う・・・
いや違わない。
しかしおそらく敵だが行動自体は敵のものではない。
そう伝えたいが伝わる気はしなかった。
相変わらず風魔殿は何も言わないまま、岩場をふわりと越えて政宗殿の前へと降り立った。
「ふ、風魔殿、そんなに寄ったら殺されるぞ! 政宗殿は気が立っているからっ・・・」
「・・・。」
しかし政宗殿は黙って風魔殿の面の下にあるであろう顔を面の上から睨み付けると、構えていた刀を鞘に戻した。
どういう心境の変化なのか、私には分からなかった。
ホッと息を洩らしたが、すぐにぐらりと体勢が崩れた。
「わっ・・・」
風魔殿の腕の中にいたはずなのだが、ぐらりと一瞬不安定に揺れた。
次の瞬間には、私を彼から奪い取った政宗殿の腕に支えられていたのだ。
「あ・・・ま、政宗殿っ・・・」
私の背中に回してしっかりとこの体を持ち上げているその腕に、すっかりと体を預けてみると、それはとても温かかった。
いや熱いくらいの体温だ。
待ちわびた感覚だった。