第2章 右目を追う
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「どこへ連れていくのだ、風魔殿!」
「・・・。」
「黙っていては分からぬ!」
彼の耳元でギャーギャ騒いだが、ピクリとも反応してはくれなかった。
しかし不思議なことに嫌な企みは感じなかった。
かといって良い企みも感じはしない。
行き先が分からぬ以上は私には大きな不安がつきまとった。
しかしこんな速さで移動しているのにこれ以上喋っては舌を噛みそうだと思い、とりあえずは黙った。
「!?・・・あ、あれは・・・」
しばらくして風魔殿の腕の中から見えてきたのは、こちらへと向かって岩場を縫うように進むとある軍勢だった。
その軍勢とは、怒りを宿した表情で馬を走らせる数多の兵たちと、それを先導する私の想い人の姿であった。
ここは大阪とは逆方向。
こんなところまで、私を追いかけてきてくれたのか・・・。
「政宗殿っ・・・」
つぶやくと、風魔殿はそのもとへと岩場を急降下していく。
その素早い動きと目眩ましの花弁のせいで、相手からは我々が瞬間的に現れたように見えるだろう。
風魔殿は軍勢の前の岩場に降り立ち、先頭の政宗殿と元親を見下ろした。
「誰だ!?」
先頭の二人が馬に急停止の合図を出し、大所帯の軍勢が次々と渋滞していった。
「・・・政宗殿っ・・・」
「紫乃!?」