第2章 右目を追う
「貴様っ・・・なんのマネだ!」
動かぬ体を必死でよじって抵抗した。
松永に辱しめられた思い出があるせいか、政宗殿以外の男にこうされることはやはり肝が冷えそうなほどの嫌悪感がある。
風魔小太郎はそのまま私の腕をつかんで体を起こしそうと引っ張ってきた。
「な、何をするっ! 触るな!」
「・・・。」
しかし次に彼の腕は私の肩を持って上半身を掬い上げ、もう一方の腕で折った足の下からこの体を抱え上げたのだ。
「わっ・・・」
彼が立ち上がると、ふわりとこの体が浮いた。
自分の重さを忘れるくらいに軽々と持ち上げるものだから、空を舞う花びらにでも成り代わったようにさえ感じた。
「風魔殿・・・?」
抱える体はおよそ熱を感じぬくらいに冷ややかだ。
彼の術で花弁が舞った。
はらはらとその花弁は、私たちの姿を消していく。
そうして風魔殿に抱えられながら、この屋敷から夜空に舞い上がった。