第2章 右目を追う
「ああ、君はもう帰りたまえ。やはり生身の女など、歴史を刻み朽ちゆく高貴な品を前にすると、ひどく見劣りする」
「・・・は?」
「体が動くようになるまで、そこの哀れな忍と語らうといい」
「ちょ、松永っ・・・」
意味の分からぬうちに、私をこの薄気味悪い部屋に置き去りにして行ってしまった。
・・・いや、こちらとしては興が冷めたのなら好都合だが・・・なぜだろう、一方的に失礼なことを言われた悔しさが残った。
「・・・」
そしてこの謎の忍と一緒にされたままだ。
「あの・・・風魔小太郎。私についている必要などない。勝手に出ていく」
「・・・。」
「何とか言ったらどうだ」
「・・・。」
こいつ口が利けぬのか?
なんにしろ、こうして動けぬところに側に立たれては気味が悪い。
噂の伝説の忍が、物言わずあの松永の宝探しになんて手を貸しているとは・・・。
「・・・そういえば、先程の刀、豊臣のものなのだろう? どこから持ってきた? 大阪の城に忍び込んだのか?」
「・・・。」
「城に入ったのだな! そこに佐助様が向かっていたはずなのだ! 見たか!? お前まさか攻撃したりしてないだろうな!?」
「・・・。」
「片倉殿は!? 伊達の副将が囚われていたはずだ! 逃げ延びていたか!?」
「・・・。」
なるほど、こいつ、物は言わずが・・・
どうやら意志の疎通はできるようだ。