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【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第2章 右目を追う




──────


じわりじわりと近づく奴の顔に、私はどうすることもできずに歯を食いしばるしかなかった。

顎を掴む松永の指は一本一本が針金のような鋭さで、顔背けることさえできない。


(政宗殿・・・政宗殿っ・・・助けて・・・)


ここへきて情けないほどに彼の助けを求めてしまう。

それほどに、他の男に触れられることはこの身が拒絶していた。

奴の息を感じ、もう唇と唇の距離はわずかであった。

──そんなとき、背後で物音がした。


「・・・戻ったか」


松永は私の背後にいるであろう者を見ると、ニヤリと笑みを浮かべ、すぐに私から手を離した。

背後の者は、声を出さない。

わずかな足音。

この歩き方は忍だ。

音はしても気配はない。

逆ならよくあることなのだが、ここまで気配を消せるというのはかなりの手練れだ。

その者は松永の方へと寄ってきているようで、ようやく私の視界に姿を現した。


「・・・風魔小太郎っ・・・伝説の忍と噂の・・・」


彼は目を面で隠しているが、こちらに視線を向けたのが分かった。

松永は風魔小太郎の持っている鞘に収まった刀を見て、さらに笑みを深めた。


「御苦労。三日月宗近・・・よくぞ持って帰ったではないか。これが手に入れば豊臣になど用はない。・・・今宵はこの宝刀で一献傾けるとしよう」


まるで私になど興味はなかったかのように、奴は刀を手に取るなり別室へ向かおうと立ち上がった。


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