第2章 右目を追う
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「ちくしょうあの野郎っ! また紫乃に手ェ出しやがったらっ・・・!」
「落ち着きな、独眼竜」
伊達・長曾我部両軍は落下した岩場をはい上がったが、すでに松永はいなくなっていた。
丈夫な男どもは傷だらけになりつつも闘志はメラメラと燃えている。
特に伊達軍は、再び松永に紫乃を奪われたとあって怒りが収まらずにいた。
「これが落ち着いてられっかってんだ! 俺は今すぐ奴の居所を探しに行くぜ!」
「どこにいるかわかるってのかい? 闇雲に探したところで見つかるわけじゃねぇだろ?」
「うるせぇ! 俺はアイツと約束したっ・・・2度と同じ目には合わせねぇってな! あの変態野郎には指一本でも触らせてたまるか!」
鎧がカシャンカシャンと鳴るくらいの身ぶりで怒りを表す政宗の様子から、元親は紫乃が過去に松永から一体どんな仕打ちを受けたのか予想がついた。
紫乃に対して恋愛感情はないと言いつつも、その事実には腹が立った。
「・・・見ろ、独眼竜。岩場の下、あっちだ」
ふいに元親は指をさした。
その方向に両軍が目を向ける。
そこには厳つい鎧を着た軍勢が列を成して前進していた。
向かっている方角は関東のようだ。
「・・・豊臣の奴らか」
「そうよ、ありゃ本隊だ。おそらく何方かに軍を伸ばしてるはずだろうが、狙いは関東、さしずめ小田原を拠点にでも据え直すって腹だろう」
「チッ・・・松永は結局、豊臣に飼われてたってわけかよ!俺たちを足留めして本隊から避けやがったのか。」
「だがこれで行き先は分かったも同然よ。戦に興味のねぇ松永は役が終わりゃあ豊臣から離れるはずだ。互いに信用なんかしてねぇだろうからな。そうなりゃ、大阪から離れて、かつこの軍勢からも離れるはずだ」
「・・・そこに紫乃が捕らわれてるってことか。」
「紫乃を取り返して、大阪に乗り込む。奪われたモンを取り返したら、今度はこの本隊の軍勢を追っかけて小田原に突っ込む。どうだ、独眼竜」
「・・・OK、んじゃさっさと済ましちまおうぜ!」
政宗は馬を目当ての方角へといち早く走らせた。
両軍もすぐにそれに続いた。