第2章 右目を追う
───目を覚ますとそこは、見慣れぬ屋敷の床の間だった。
宙を浮いているかのような意識を気力で戻すと、ここがおそらく松永の屋敷だと気がついた。
そこかしこに値打ちものが並んでいる。
私はそれらと共に並べられるように座らされていた。
おぞましく思ったが体は動かなかった。
「・・・目が覚めたかな?」
「松永っ・・・!?」
松永は私の背の方に腰かけていた。
酒を飲んでいる。
「貴様、ふざけるなっ! また私を拐って、何のつもりだ!」
「おや、それはもう伝えたはずだ。君を我が物にし、世にも珍しい竜の涙を見ようと思うてな。どうせ迎えに来るのだろう?」
「っ・・・気色の悪いっ・・・」
毒のせいで逃げ出すことはおろか、抵抗することもできそうにない。
虚勢を張っていても、心底怖い。
またあんなことをされるというのか、この男に。
「やめろっ・・・」
「・・・不思議なものだ。接吻などに意味を感じたことはなかったが・・・君を見ていると、どうやらそうでもなくなる」
嫌だ。
松永の指が私の顎を固定するように捕まえる。
口づけという行為は、他のどんな行為よりもおぞましい。
この男に一番されたくない行為だ。
政宗殿としかしたくない。
政宗殿とする口づけは、体の芯から熱くなって、心地よさに溺れてしまいそうになる。
それをこんな男に汚されたくないのに。
「・・・やめろ・・・嫌だ、絶対にっ・・・」
「物は試しだと思わんかね。君も独眼竜以外の男を知る機会があっても良いだろう?」
「・・・嫌だっ・・・離せ!」