第2章 右目を追う
「はぁ・・はぁ・・な、なんでか力が入らぬ・・・すまない・・・」
「・・・」
私を支えながら、ただじっと顔を覗き込んでいる政宗殿も、肩が上下するほどの荒い呼吸をしている。
彼も、ひどく高揚している。
「・・・紫乃、お前・・・たまんねぇ・・・」
「え・・・・?」
「・・・覚悟できてねぇなら、もう、そのまま寝ちまいやがれ。・・・これ以上何かしたら、俺は止まらねぇぞ・・・」
ボボボ、と爆発するほどに顔が熱くなった。
政宗殿はいつも余裕があって、いつも弄ぶように私に迫ってくるのに・・・
なのに、今目の前にいる彼の表情には余裕はなかった。
今は政宗殿と結ばれるわけにはいかない、その私の意思を尊重しつつも、それでは収まりがきかないとでもいうような表情。
私のために、私への欲望を抑え込んでいる。
そんな始めて見る彼の表情に、私はひどく興奮した。
─もっと見たい─
そんなことを思った。
でも、そんな気持ちはすぐにしまいこんだ。
・・・だってそれは、彼に対して、あまりにも卑怯なことだから。
「・・・わかった・・・少し、眠ることにする。」
ここは彼の言うとおり、私も我慢をしなければ。
彼の口づけに溺れて、また自分を見失ってはだめだ。
彼の隣で目を閉じると、先程の興奮がじんわりと解けていくようにすぐに眠りに落ちていけた。
「・・・マジで寝るのかよ、アンタ」
夢の中か現実か分からぬほどの意識の中、ため息まじりのそんな声が聴こえた気もするけれど。