第2章 右目を追う
「んっ・・・・ぁ・・・だ、だめ・・・やめっ・・・」
口では抵抗しても、身体にはまったく力が入らない。
時折、舐められている耳元から、彼の吐息が聴こえてくる。
そのたびに、溶けてしまいそうなほど意識が揺らいだ。
─ぴちゃ・・ぴちゃ・・─
恥ずかしいし、情けないほどに何も考えられなくて、動くことも抵抗することもできなくなってしまったが、身体の奥が痺れる酔いは、クセになるほどに気持ち良かった。
「はあっ・・・はあっ・・・」
─ちゅ・・ぴちゃ・・─
「あっ・・・はあっ・・・んっ・・・」
木にもたれて座り込み、腕はだらりと垂れているだけ。
吸われている右の耳だけが高い位置に留まっており、それ以外の身体はしなるように力が抜けきっていた。
甘い痺れに素直に声が漏れていく。
それを抑える余裕など、私にはなかった。
「・・・ハァッ・・・紫乃っ・・・」
「んっ・・・んぁ・・・あん・・・政宗殿っ・・・」
しばらく耳元を離してくれなかったが、やっと解放されると、へにゃりと身体は沈んでいった。
自分でも驚くほどに骨抜きになってしまっていて、倒れていく背を政宗殿が抱き抱えて支えてくれた。
視界も揺れていて、意識も飛びそうだ。
自分がどんな表情をしているかも分からない。
おそらく気持ち良さに溶けてしまいそうな表情を隠せていないはずだ。
恥ずかしいっ・・・
死んでしまいそうだ・・・
「・・・す、すまない・・・政宗殿っ・・・だ、大丈夫だっ・・・」
くらくらとする甘い余韻に耐えながら、なんとか絡まる彼の腕から起き上がろうと試みる。
しかしだらりと伸びる脚にも力が入らなくて、すぐにまた彼の腕に収まってしまった。