第2章 右目を追う
「紫乃・・・お前、馬鹿かっ・・・」
「なっ・・・」
「・・・んなことされて、手ぇ出さねーでいられるかよっ・・・!」
強い力で引き寄せられ、私の背は先ほどまで彼が預けていたはずの木に押し付けられた。
それとともに、間髪入れずに彼の身体が迫ってくる。
一度離れたはずの唇が、また強引に重ねられた。
背後ではまだ皆の声がしているというのに・・・。
「ん・・・ふぁ・・・」
「・・・っ・・・紫乃っ・・・」
幸村様が任を果たすまで、せめてそれまでは政宗殿に溺れぬように、と心に決めていたはずなのに。
それはこうして唇を重ねられるとすぐに揺らいでしまう。
「っ・・・政宗、殿・・・」
彼の熱い舌が移動していって、私の耳に絡まっていく。
「ひゃっ・・・!」
ぴちゃ、ぴちゃ、という濡れた舌の音が、右の耳から奥へと響いていく。
ぞわりと一瞬だけ背筋に震えが走り、頭の中は真っ白になった。
それはとても羞恥で、感じたことのない感覚。
身を固くしてしばらく耐えると、力が抜けた頃にはその感覚は快感に変わっていく。