• テキストサイズ

【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第2章 右目を追う





「・・・」

「・・・」


元気がないな。

たまにこうして、政宗殿は不安や苛立ちを独りで抱え込む。

きっと今までそれを共有していたのが片倉殿だったのだ。

・・・私が代わりになれたらいいのに。

私にできることがあれば・・・。


「あの・・・政宗殿」

「なんだ」

「・・・わ、私はまだ、お前との約束で果たしていないことがある。それを今済ませてもいいか?」

「あぁ? 何のこと・・・・・・・・・・・・

・・・!?」



すごく一瞬のことだったと思う。

私の勇気が一瞬しか続かなかった。

もたれている彼の、少しだけ開いた無防備な唇に、そっと口付けた。

チュ、と唇の音が鳴って、それはすぐに終わった。


「・・・お、お前っ・・・」


いつも余裕な顔で私に迫る政宗殿だが、今回ばかりは目を丸くしてこちらを見ている。

私も恥ずかしくて、口づけが済んだらすぐに俯いた。


「ま、政宗殿・・・覚えているか? 以前、奥州の城でお前に襲われかけたとき・・・私から口づけをすれば、手を止めてくれると約束した」

「・・・っ・・あぁ?」

「あのとき、お前は手を止めてくれたのに、私は口づけをしなかった。・・・・・それは、約束を破ったままだったから・・・だからっ・・・・」


久しぶりの、政宗殿の唇の感触に、甘い感覚が蘇ってきた。

男らしくて乾いた唇からは想像もつかないほどに、甘いのだ。

それは一度口をつけると、ずっとこの唇に残る。


「・・・・紫乃・・・お前っ・・・」

「これで・・・約束は果たしただろうっ・・・?」


心に引っ掛かっていたのは事実だが、こんなのは過去からどうにか引っ張り出してきた言い訳だ。

本当は、片倉殿に代わるほどの力を持ち合わせていないから、だからこうするしかなかったのだ。

いつも支えてくれる政宗殿に報いるためにできることが、これしかなかった。

・・・でも多分、それもさらに言い訳なのだ。

本当に本当は、政宗殿に、口づけたかっただけのくせに。

/ 152ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp