第2章 右目を追う
すると見かねた元親は、茶化すのをやめて真剣に答え始めた。
「・・・まあ、聞いたとおりだ。紫乃とはそういう仲じゃねぇ。
例え俺にその気があったとしたって、紫乃はどうやら意中の男がいるみてぇだからな。そいつに夢中で俺の入る隙なんて残ってねぇのさ。さすがに横恋慕する気はねぇってもんよ」
なっ・・・・
「元親!!」
「おっと、こりゃ言っちゃいけなかったか?」
元親はおそらく、前に話した私の「想い人」というのが、政宗殿であると気づいている。
政宗殿の前で私にそれを問い詰めないのがその証だ。
でも気づいた上で、本人にそんなことを言うなんて・・・
恥ずかしくて政宗殿の顔が見られない。
真っ赤になった顔を、ぐるりと彼から背けた。
「・・・へぇ、意中の男ねぇ。初耳だ」
「・・・。」
ちくしょう、政宗殿、ニヤニヤしやがって。
完全に自分のことだと思っている。
いや、そうなんだけども。
「うるさい! そんな相手は今はいない! 血迷っていただけだ!」
いくら詮索されようと、もう私からは憎まれ口しか出てこないだろう。
「これで俺の疑いは晴れたってもんだろ。そろそろ大阪攻めの策を練らせてもらうぜ」
元親が話を戻したので、それを逃さぬように、さっそく策を出した。
「奇襲をかける若狭回りと、その隙に山城から大阪を突く本隊に分かれるのはどうだ? せっかく大将が二人もいるのだから」
「OK.それじゃ奇襲は任せたぜ、西海の鬼」
「よっしゃ。若狭回りは任せたぜ、独眼竜」
・・・・・。
「「ああ"!?」」
そうだった。
コイツらどちらも、囮を引き受けるような質じゃなかった。
「ふざけんじゃねぇぞ! こっちに囮になれってのか!?」
「そっちだって俺たちに囮になれってのかい!?」
ああもう、やっぱりこの二人・・・似ている。