第2章 右目を追う
──────
「っつーわけよぉ。三途の海から蘇って、豊臣に取られちまった仲間を助けに行かなきゃならねぇ」
私たちはやっと落ち着いて、腰を据え話をすることとなった。
倒した木を二本並べ、そこに政宗殿と私、向かい合って元親が座る。
後ろではコソコソと、「筆頭と紫乃は接吻まで進んでるってことか」「そりゃ筆頭みたいなカッチョイー男前に唇奪われてみろ、多分俺たちでも腰砕かすぜ」「でも俺はぶっちゃけ筆頭が羨ましい・・・」などと、あまりにも聞くに耐えない四人組の話声が聴こえてくるので、私はそわそわと落ち着かなかった。
政宗殿の機嫌は完全に治ったわけではないが、同じく豊臣に仲間を奪われている元親の話を真剣に聞いている。
豊臣と毛利の連合軍に沈められた元親は、こうしてどうにか陸へ這い上がってきたのだ。
通りかかった伊達軍から馬を奪い、大阪へと仲間を取り返しに行く。
事情を聞いてみれば自然なことだ。
「OK.せっかく鬼ヶ島からここまで流れてきたみてーだしな。大阪まで足を貸してやらねぇこともねぇ」
「話が分かるじゃねぇか。さぁて、どう攻める?」
「だがその前に1つはっきりさせておきてぇことがある」
「なんだ?」
「テメェ、本当に紫乃とは何でもねぇんだな?」
・・・まだそんなことを気にしていたのか。
そう思ったのは私だけではなかったようで、元親もキョトンとした表情で、次の瞬間には笑いだしてしまった。
「ハッハッ・・・お前さん、本当に紫乃に惚れてんだな」
「や、やめろ元親。政宗殿も。さっきから私が何もないと答えているだろうが。先ほどは死んだと思っていた元親が生きていたから、興奮してしまっただけで・・・」
私が止めに入ると、政宗殿はまたイライラとした様子で噛みついてくる。
「お前の言うことはズレてんだよ。信用ならねぇ」
「なんだと!?」
「コイツに惚れてんのか惚れてねぇのか、どっちだ」
「だから元親とは友達で、惚れてなどいないと言ってるだろうが!」
政宗殿は意外にしつこいほどに嫉妬深いな。
嫉妬・・・・か。嫉妬されることはその、嬉しくないと言えば嘘になるが。
しかし私が好きなのは政宗殿だと白状するわけにもいかぬし、どうにも説得しづらい。