第1章 再会の意味
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奥州へ来るのはいつぶりだろう。
様子見はずっと佐助様に頼んでしまっていたし、安土山で別れたきり政宗殿のことは見ていない。
・・・おそらく、私が無意識に避けている。
──あのときの接吻が忘れられなくて、ずっと唇に感触が残っている気がするのだ。
─『俺はアンタに心底惚れてる。』─
もうすっかり忘れているフリをしながら、私は覚えている。
あのときの政宗殿の顔つきも、声色も。
接吻の味も。
「・・・こんなことで、会えるわけないだろう・・・ 」
だから会いたくなどないのだ。
会えば私は、また・・・
「あれ? 紫乃? 紫乃か!?」
この間の抜けた声は・・・
「孫兵衛!」
「久しぶりじゃねーか! 何してんだよこんなところで!」
城の周りを隠れもせずフラフラしていたところへ、懐かしい顔がやってきた。
小太りの孫兵衛だ。
その顔を見た瞬間、ここで過ごしたときのことを思い出した。
「また任務で来たのだ。会えて嬉しいぞ孫兵衛」
「なんだよ、てっきり筆頭と逢い引きに来たのかと思ったぜ」
「なっ・・・馬鹿なことを言うな!」
「でもよぉ、お前が甲斐に戻っちまっても筆頭は特に変わらねぇし・・・お前、嫁に来るならそろそろ急がねーと、筆頭はお前のこと忘れちまうぜ」
「・・・なっ」